職人インタビュー
小嶋 俊小菱屋忠兵衛
京都の提灯、その特徴と技
小嶋商店は当代で9代目なんですね。
小嶋商店は江戸時代後期の寛政年間(1789-1801)に創業し、寺社から一般用まで幅広い分野の提灯を製作してきました。現在は父が9代目として伝統の技を守り、私と弟が職人として一緒に働いています。
伝統建築が多い京都では今も街のいたるところで提灯を目にします。南座の大提灯も小嶋商店さんのお仕事だと伺いました。
そうですね。昔から大小さまざまな提灯をつくらせていただいています。電気が普及する以前は日常の照明だったわけですから、暮らしの灯りもご商売の照明器具もすべて提灯が担っていたんですね。京都の街はその名残がまだありますね。
小嶋商店さんに受け継がれている「京・地張り提灯」とはどのような技法ですか?
提灯の製法は、竹ひごを螺旋状に巻く「巻骨式提灯」が一般的です。対して「京・地張り提灯」は輪にした竹ひごを平行にいくつも組んで提灯の形状に仕上げていく方法です。前者に比べ耐久性があり、美しい線を長く保つことができるのが特徴です。こちらは、うちを含めた京都の限られた工房だけが受け継ぐ京都の伝統的な製法です。
新しい挑戦
照明ブランドの「小菱屋忠兵衛」はどのような経緯で誕生したのですか?
やはり、多くの方に提灯のことを知ってもらいたいという思いが強かったですね。「小菱屋忠兵衛」は弟とふたりで立ち上げました。ブランド化にすることで「小嶋商店」の看板ででは難しいチャレンジもしやすくなるのではと考えたんです。じつは「小菱屋忠兵衛」は初代の屋号なんです。新しい分野をはじめるにあたり「あらためて初心にかえってものづくりに励もう」という気持ちもありました。
伝統技法を駆使しながらも、デザインは新しく。LEDなども活用して日常の使いやすさも考慮して製品づくりをしています。
小菱屋忠兵衛のミニ提灯「ちび丸」(制作体験)も構造は伝統的な「京・地張り提灯」ですね。
そうですね。京都の伝統製法を受け継ぐ職人として変えてはいけない部分があります。そこをしっかりと守りながら、新しいチャレンジには勇気を持って踏み出したいと思っています。
近年では商業施設や飲食店からのオーダーも多いそうですね。
「京都の伝統に根ざしながらも、現代的なデザインの提灯を」と、ご注文頂くことが多く、毎回、苦心しながら製作しています。でも、楽しくもあるんですよね。デザイナーの方と相談したり、弟と一緒に試行錯誤して、アイデアがかたちに近づいていく過程はとても新鮮です。職人として、ものづくりに携わっていて良かった、と思える時間ですね。