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伝統工芸品 京こま職人 最後の砦 中村佳之氏インタビュー

2023/01/24

あなたの経歴について少しお尋ねします。どのようなことに影響されて今のお仕事を選択されたのでしょうか?

 1968年(昭和43年)に京こま製造の家に生まれ、小学生の頃から京こま作りを習っていました。1980年代頃より需要が厳しく落ち込み、とうとう廃業。大人になり会社員として働いていましたが、2002年(平成14年)に京こま職人の道を選びました。動機は懐かしさと京こまの美しさを改めて再確認したからです。

 職業上のキャリア(旅路)で遭遇した最大の難関は何でしたか?

 実演披露の催事出張で荷物が遅れ商品が届かない。・・・道具は手持ちでしたので、生地を現地で購入して実演にこぎつけました。また、納期出荷に間に合わず、新幹線の車内で塗って乾燥させ、切って削って箱に入れて新宿へ当日持参したこともありました。 初めての「京こま」講演では、緊張のあまり呼吸するタイミングが分からなくなり貧血になってしまった苦い経験もあります。

 自分の仕事のどんなところがお好きですか?

 老若男女、言葉の通じない海外の方とでも、独楽を回して笑顔のコミュニケーションが生まれることです。

 創作活動上のインスピレーションの源は何ですか?

 普段の生活の中すべてにあります。例えば、月の位置を見て地球の自転を感じ、夜が明ける時間から季節を感じ、太陽系の回転を感じます。直線的な流れや、もの事の順序にも回転や色を感じることができます。

 ここ2、3年の出来事(コロナパンデミック)は、あなたの仕事や業界にどのような影響を及ぼしましたか?

 定期的に行っていた海外開拓営業を中断。来店者も催事も減少したことから、おのずと売上減少し経営苦境に陥りました。それでも新しいスタートラインと気持ちを切り替えて、新商品の開発と楽しめる体験と身になる講演内容の整備など、コロナ明けを夢見て手を止めずに今もまだ続けてやっています。

 2023年に向けて、当ブログの読者にどんな願いや励ましの言葉をかけてくれるのでしょうか?

 毎年様々な事が起こり目の前に壁が立ちはだかります。指先でひねって「京こま」を回すときっと心がなごみますよ。

 工芸品やデザインを愛する人たちに、あなたの作品や製品を薦める理由を教えてください。人々の生活にどのようなプラスの影響を与えることができるのでしょうか?

 京こまは便利のものでもないし、目的もそれほど無いのですが、じっと見ているとついつい回したくなるのが「京こま」です。愛着を持って使っていただけます。人に語りたくなり、回して見せたくもなり、さらに回して欲しくもなります。心の奥にある素直な自分を感じる(戻る)ことができます。

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  インタビュー・写真提供:ブルカヴェツ・アナスタシア (ArigatoCreative.co/jp)

  編集 :京都伝統産業ミュージアム 佐藤裕